夢遊病

 続きを失った話と君を求めて、飛び出した街が青く染まっている、僕は小さく泣いてしまって、見えなければいい映像が頭上で旋回、南中に向かう閃光を待ち侘びる群衆を掻き分けていく。傷を洗う酷く冷えた水に知らず知らず色を託して、夏が死んで君は笑って消えた。蝉時雨に濡れた斬頭台、朝靄の天鵞絨、終わりかけた蓮の花弁、それも全部揺らいで消えた。戦うなかれ、君の曙が誰かの精液で濁っている。
 神様のメロディを口ずさんで始発電車はゆっくりとプラットホームに入ってくる。四時台の全貌、狂気のようなキスに込められた遺伝子の存続、ああどうかと洩れだした感嘆符に縋る。論述した技法をそのままに写して、僕の体はひとつの宇宙を遊泳する。さざ波を掻いて酸素を失う僕をそれでも嘲てくださいますか?では、いかがでしょう、怒れる雲に汚された肉を啄んでみては?…悲しい。