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あさあけ

昧爽前の、酷く青い街を動いている生命体二つ。それは君と僕。近似値ばかりが辺りに散らばっていて正解がないんです。仄黒い影を率いて僕ら、ひとつには、なれないのに、ふたつに、はなれないでいる。斯様な、疎ましき散歩、麗しのダンス、濁る目、雨の気配。

3.11

胸いっぱいの哀しみと、消えてしまった燈のために黒い服をまとって何事もなかったようにワルツを踊ろう。立ち尽くした岐路の真ん中で君のためにも僕が決めよう。たとえ正解でなくてもついてきてくれるかい?内と外、種と畑、引き続けてきた線を描いていた鉛…

夢遊病

続きを失った話と君を求めて、飛び出した街が青く染まっている、僕は小さく泣いてしまって、見えなければいい映像が頭上で旋回、南中に向かう閃光を待ち侘びる群衆を掻き分けていく。傷を洗う酷く冷えた水に知らず知らず色を託して、夏が死んで君は笑って消…

もう動かぬ玩具になった僕を置いて君は立て、進め。それでも憐れむ眼があるのなら、僕の手を取ってくれませんか?渇いた宇宙の一人旅は永遠という無様な名前に讃美され、魂が滅んだあとも肉体が惑星間を回遊!罪人どもの祈る手に今宵も毒降る半夏生。恥じら…

グッドバイ・モンスターズ

終夜眠りこけていた、朝が来てなんとなくわかった。あの日、君が投げ掛けたエニグマはそういうことだったんだね。勤めた旭に強請ったところで戻らない可惜夜は忘れます、僕は労働を貪ろう。栄養に溢れた食卓を残さず平らげたら、描かなかった明後日の絵を未…

言葉の羅列

甘いガムを噛み締めたらいつしか雨はあがっていて、篠崎ランプを越えた後、僕は君を目で追いました。風景になりそこなった若さの影が歪んでも次の花が咲くまでに次の駅には着いてしまう。融けだした身体を寄せて凝固するさよならを覚う、悪い人だ!わからな…

乞い患い

繋ぎそびれた手はあてのない旅に出る前にポケットにしまって、聞いていなかった話の続きを頭の中で作って笑う。どうしたの?なんて言われる前に糸口を爪で引っ掻いて剥いだ。患っている。百も承知です。やはり曇天の葛西には飼い馴らされた魚が無言の影を落…

夢を見た

金輪際、真理という不可思議に触れるのは止そう。化石のように白く凝り固まり、笑わなくなった月を嗤う。雨に怯えた水棲生物、また次の季節に憧れる桜の俤、岐路に立たされた生命線、いま誰を選ぼうか迷い続けたまま、アリバイの証人は僕のために決死の嘘を…

十七歳と九ヶ月

まるで愚図のようだと誰かが笑いながら罵るので、僕の懐に携えていた遺書はチョコレートで汚れてしまったよ。教室のカーテンが薄ら笑いで揺れている、陽光の中で僕は本当の意味での孤独を覚う。空しく撞かれた鐘の音を合図に散々になった少女等の暴れた髪に…

ハッピーバースデー

ヒーローはあの娘を救うためにたくさんの人を殺してハッピーエンディング、思想の中で死んでいった彼らは最期まで幸せでした?月蝕の夜に僕はやさしい悪魔と膚を寄せ合って、フロイトはこんな僕に何を話すだろう、ユングは僕を罵るだろうか。日を追う毎に美…

Re:

枯れ切ったその眼窩を濡らすのは今日の雨だろうか、飢えたこの肋骨を登るのは明日の半月だろうか。僕は魔物を飼い馴らし、君に喰らい付いて離れない。「もう一度…」と伸べた手の行方、目の交点には僕ではなくて深宇宙。夜鷹は山羊の歌うたい、僕は一抱えのヴ…

夜船と北窓

十文字のうそが取り返しのつかないことになって全てががらがらと崩れ去る夜に僕は真実を段ボールにしまっていた。遥かに大きな規模の月の海、砂糖菓子、天体観測、白妙の雪を望み迎撃する望遠鏡。新しく手に入れた力はやがて革命を起こすかもしれないんだ、…

無題

群青色の刺繍糸で東の空と海の遠さを縫い付けて、砕けた玻璃の星が何も言わず嘲謔、僕はただぼんやり眼を綴じる。幼さは悪びれもなく君を傷つけた、僕は幾年も経ってそれに気付いた。今更泣いたって遅いんだぜ、再び見開いた網膜に影を無くした僕の足、窓の…

ナイトパレード

真夜中ってだけでも戸惑うのに、ひとつも星が無いのは怖いな。星明かりも絶えたのに、この手の生命線が見えるのは不思議だ。眠らない街が眠りに就く時、人類は正しい姿で残っているだろうか。新しい進化が次の戦いを僕らは笑って夜に踊っているけれど、本当…

レムニスケートの煙

一瞬は粉々に砕けて永遠になった。僕ははっと息を飲み、しばらく黙っていると一月の寒さがこころの歪んだ部分を抉り取って、うろんな客はいつの間にか帰るべき場所もないのにどこかへ行ってしまった。予言者の思い描いた最後の風景は本当に全部が絶望に包ま…

はじめまして

ウェブ文芸誌・mistoa様に 日下田の文章が掲載されました。 http://mistoa.seesaa.net/何かありましたら mixiかWEB拍手にご連絡下さい 多分mixiの方が見る回数多いです メールはあんまり見てません

さよなら

あの日の冗談と同じような顔で笑ってよ、そんな言葉も聴かず君は灰になった!残酷、でも甘い月、豊饒の地図と涙で描かれた河。ただ安らかにと組み合わせた手と手は外殻だけを残し、すっかり全部溶けてしまったようだ。煙草の燃える音に気付かされ僕は眼を醒…

利口な獣とラグランジュの解

「此の世など焼け野原のやうだ。」と言った君なんかのために世界は終わらない。乗り過ごして何となく途方に暮れている人混みの中で僕は幾度となく現れた夢の惨殺死体に揺らいでいた。空腹を満たすために動物を屠ってきたのなら、空白を満たすために人を殺す…

OVERDOSED LOVE

衒うべき奇は君のために大切にしまっておいたから、僕の湾曲した月状骨を削って薬を拵えよう、世界の終わりのような朝が来たときは何錠でも差し上げよう。要らなくなった鋏、砕け損なった鏡、君の手には何が残って、僕の呼吸は何を失った?それは互いに判っ…

可惜夜

没落した眼窩に夢の跡、泣き濡れて目醒めた二十五時、身の丈に合わぬチェロを持ち出して僕は虎狩りを弾いた、夜がしんしんと深くなる深くなる。天王星がやけに輝く冬の淋しさを糧に発電所を作ろう、次の駅に誰も待っていなくとも僕は駆け抜けることを知らな…

エチュード

楽園を諦めたのは誰のせいでもなく自分の選択だろう?辿りそびれた帰路がもう待ってはくれないから、振り返るな。今は美しく眠る戦士を無碍に誹る君の眼が卑しくて、演じきれない悲劇の道化の振りすら巧く出来ないくせに笑うな。先人の拓いた荒野を貫くレー…

ロスト・イン・プラネタリウム

長い夜は明けなくて良いよ、と、うその星を潰した。あれから僕は間違ったナイフで君を殺め、正しくなったフォークでまずは内臓から、そして血から骨からすっかり君を味わった。でも君は笑っていた、分裂した僕の暴れる言葉・妄りな想いを笑っていた。結末の…

パラレルワールド・デッドエンド

僕は須く存在する日々の疲弊を紛らわすための煙草を止めて、それでなくても白い息に冬の到来が見えた。伺ったって帰ってこない問いかけ、僕の眼にはどうやら涙に濡れたってオリオンがはっきり映っている。君は何を見る、何を知る?償い方も忘れたくせに、コ…

予告と結末

ロケットの悲しい軌道を払拭することのできない六畳間、君は誰のためにその頬を濡らすの?愚かだった乞いが今日終わって、僕らは僕と君になった!曇天からは一向に雨の気配を感じられず、あんなに硬質の鉄塔が今にも蝋のようにとろけそうで、僕は地震の発生…

僕の胸は悲しみでは張り裂けない、下らない言い訳ばかり、裏切りばかりですっかり疲弊した視神経と水晶体。君は土砂降りの夜の満月だった!熟れて落ちた果実のようにあとは朽ちていくだけ、僕が死んだらここに新しい樹が生えるだろうか。点滅する身体がダメ…

神様の裏切り

間違えてきた選択を正当化するために進化の途中で小賢しい神様を創ったの?三角形の真ん中で踏み付けた砂埃、ラジオを止めて見た空に戦闘機のまぼろし、眩む空の青さがそろそろ夏も終わりだと告げているようだった、蝉時雨をいつの間にか忘れていた。何を信…

旅人算

真っ昼間に月浮かぶ初秋の影は肌寒く、それにしても太陽はいつもいつも残酷で、致命傷を抉るような旅に出たのはいつだったっけな。爪弾いた弦と世界の終わりは等しく震えて音を奏でた。さよならの凶器、露呈した骨、朝の光度と街の匂い、そのすべてを許して…

人殺しのブルース(R298 remix)

僕が立ち尽くした交差点、ハロゲンライトは折り重なって僕の鍵を照らしだすのに必死だ。二時間前、君はこの道を駆け抜けてそのまま海へ消えた。白波が砕ける様が何かを暗喩して、さよならは馬鹿みたいに殴り付ける雨のなかだった。繋がりあうには不確かすぎ…

世界の中心で愛を貪る

くたびれ果てた巨いなる魔物の背がこんなにも美しく見えるから、口ずさんでいた鼻歌が影をも失う。ねぇ、伸ばしていた手が君に触れたとき、世界は変わると思っていた僕は淘汰されるべき生物かなあ。食らいすぎた薄荷煙草のせいで荒み果てた咽喉の荒野に佇ん…