無題

 群青色の刺繍糸で東の空と海の遠さを縫い付けて、砕けた玻璃の星が何も言わず嘲謔、僕はただぼんやり眼を綴じる。幼さは悪びれもなく君を傷つけた、僕は幾年も経ってそれに気付いた。今更泣いたって遅いんだぜ、再び見開いた網膜に影を無くした僕の足、窓の外には白々しい半月、風強し、近付いては遠退く待ち侘びた春。
 世界は終わる!それが存在するということなのです。終わらせようと思えばすぐ済むことなのにそれを拒み続けているのは、君が明日を選んでいるんだ。ならば麻のロープではなく体温を選んで欲しい、今更手を伸べる軽率な僕の温度を。献身的な殺人、盲信的な愛撫、治癒と負傷の堂々巡り、固く閉じた群青の夕とそれを解く金色の朝、何をそんなに怯えている、その掌が見た世界は無意味な環状線ばかりかい?与えられた氏名と使命を全うする美しい生物ではないか、君は!