2008-01-01から1年間の記事一覧

睡眠薬と覚醒剤

ゆっくりと飽和する裸眼の水晶体が永らえた藍に濡れたら今日は最後の道を往く。ほらもう眠りから醒めろ、悲しいかな、僕らにはいつだって現実が待っている。秋分点超えてそれでも鳴るオレンジの、さよならのひかりは見えていますか?空白の九日間の上で僕ら…

真昼の手

錆びた銅に燻るお前の顔をいつまでも愛していられるとは限らない、いつか来るさよならのために今日のお前を慈しむのはどこか物悲しい。飲み干した珈琲の苦さ、頬に添うシベリアの風、凍り付いた都市の真ん中で幾千回目の真昼を恐る。尊い眼で睨んだ運命線は…

朝と轢死

飛び込んでいいかい?圧死する涙目の中で汚れない月を羨む。待ち焦がれるのには飽きたのだ、もう惑う時間すら残されていないなら高く飛ぶ方法を考えろ。砕けた硝子の消えてしまいそうな傷跡が残り続けて少し痛い。夜が明けたら次の空のことを考える、舟を漕…

生命のフレグランス

生きるために生まれてきた。大丈夫、こんな途方もない悲しみの昼が終わる、僕らはさよならとは言わない。こころの中にはあたらしい夢、正しい月夜、誰かのためにあげた産声の中で手をとり輪になって、踊ろう。何億年前もの星の光が迷わず僕の目に飛び込む!…

臓器移植

偽物みたいな雲が浮かんでいる、市谷見附から東の空を臨む。外堀通り沿いのカフェで人物の往来に耐えながら、あたらしいひかりを探す僕の掌。薄笑いの西日に唆されて来る筈もない今日を繰り返す。 こころはいつの間にか凝固してしまって刃物のように尖ってい…

海洋学

近付く寒波の跫音を聴きながら倒れた身体を冷やしていく。誰かの為の言葉をそっと呟いて、きらきらしている雨上がりをなぞる。削り過ぎた鉛筆はそれでも長くて辿り着くことない楽園への海図を描くには充分だった。 青い海には届かない、伸べた手はやっぱり宙…

妙見島行き深夜特急

無性に悲しくなった夜は、あの日の海を思い出すようにしている。じゃぶじゃぶと潮水を掻く五本の指は江戸川に浮かぶ最後の島の油脂工場のにおいがした。空っぽの内臓を埋めるのはささやかに享受するディナー、忙しなく動く心臓と息の根を止めるのは麗しきス…

十一月のシトラス

迎えたくない明日を拒む方法を知る由もなく、抗うように眠らない日々を愛することなど出来んのだ。昂ぶり尖った神経が針みたいになったら、悴んだ掌の毛細血管を紡いで瞼を縫い付ける。冬はいつだって僕を責めるのに必死、薄々感付いている身体を弔う花なん…

気象庁

気象庁ならこの気持ちをなんと命名するだろう。痛みを畏れたまま新緑色のマントを翻した。誰も手に負えない後悔など知らないだろう、頬の傷を隠さないでいたら僕らはあたらしい曇天の下でアラウンド・ザ・ワールドを踊る。君に伝うものなど何もない、君の頬…

2008

半分になって、そこには空白。思いあぐねた呼吸器に棘が生える、ほら、存在していてはいけない生命体が今目の前の鏡の中でさかさまになってないているよ。僕は2008年をこの先もずっと憎んで生きていくんだ。こんな無様な愛におぼれ、それでも私の上に立つ腐…

ひとみごくう

ひりひりと痛い肺の奥深くで寂寞の風が鳴り止まない。頓服薬を常用、地質学者の果てない夢。掌は熱を帯びていました、氷を溶かして上昇する喫水線を呼び止められずに。そのまま青く爆ぜた胸から曝けた肋骨を尖らせる。不透明な窓から覗くのは誰だ、そこにい…

月と溺死

影をそっと掠め盗って二十三時の花園通りでした約束、老いた兵器と十の爪で綻びかけた間違い探しの世を暴く。無感覚に震える指が擦った燐寸で焦げる葉の匂いに巻かれ、薄荷の苦みを頬張っては平らげる。このまま走れば間に合うだろうか、点滅する光はやがて…

方向性

僕の心に正しい方向を探してはならない、なぜなら一度囚われたならば逃げてはいけないと言われたからです。歯の足りない歯車は社会の中では回れない、仕合わせな環境を探したいのに無駄な火の粉を飛ばして削られながらこれからずっと生きていなくては。これ…

エチュード

長い戦いが今終わる!とうとうと雨を呼ばない、僕は雨乞い師になる夢を見た。繰り返す!日常に疲弊する精神が眠れない日々を続かせる。急かせ、もう一度だけ言うぞ、愛しているんだ、こんな愛無き世界に、僕はひとつにはなれない、二つに離れない。曖昧な正…

千代田区ストレンジャー

夜、とりわけ深夜のこの街を歩き回るのが好きだ。大通りを避け、薄曇りの細切れになった空をぼんやり見ては、ガス切れ間近の100円ライターと二、三度格闘してふらふらと歩き出す。「そういえば千代田区は路上喫煙禁止だったな。」へっと背徳を含んだ口角を引…

平行の殺意

空のナイフを持て余し、いつでも誰かをぶっ殺すような気持ちで歩いていく。風を切る肩にアスマサーンの上空を飛ぶカラスの幻影を見た。破裂しそうな形が右折路を遠ざける、平行移動が終わらないのは鏡の中の自分と擦れ違う錯覚ではない。煙草を辞められない…

秋雨前線

そのロマンスに抵抗しない。上半身には鉱物の中で眠る者を、下半身には新しい犯罪を。僕らは青い血を携え、如何でしょう、もう消えかけている八月の亡霊と対峙するこのザマは。霧雨に傘などいらない、裏切りにやさしさなど望んでおらん、愛すべき者はいつだ…

ロスト・ネーム

癒着していく核心の中で産声は高鳴るように神無月を切り裂いて往くパレード。白々しい嘘を赤に染めたらいつかの海を抱き締めたい!椿の書庫まで迎えに来て、無口な人よ。爆ぜた積み木を食い止めるには神様にでもならなくてはな、重力に甘えて身体を保つ僕の…

埋葬症

あなたは永劫の空白の中を生きる、会えないなど理解している。遊び疲れた僕らは血に果て、大いなる潮に巻かれてもこの手を離せずにいたい。尖った三日月の向こうにあなたへの扉が続いている、期待は叶わないとしても張り巡ってしまうから一思いに閉ざして欲…

刑法77条

今日の世界はこうもゆっくりと叶わない指と指とを組み合わせて、もう一度明日の夢を見て、僕の下腹部には君がいない。同様にして太陽の往来の軌道計算、恋という化学物質、爆発しそうな果実を抱える僕の血は赤いのさ。革命前夜の作り上げた火炎瓶と再来年末…

アトモスフィア

加害者だらけのこんな夜には、からからに息絶えた蝉の気分で夏は続くのだ。喪服の人影に懐かしい匂いと悲しくならないようにバランスを取った、汗ばんだまま笑っていた。三番線発の急行電車に飛び乗ってあの人の生活を飛び越えていく。迷妄主義者はブルーフ…

一行の行間

僕はどうして銀座線を待っているのだ?誰かの為に繋がった愛を陰茎の暴走の所為にして、弱く光る木星の火傷で風圧に耐えきれない跳躍して、ただ空白の溢れ返る室内、電気は消したが東京は結局眠らない。こんなに空は放電しているのにそれを感じさせないほど…

柩の舟

雨雲のような昏睡で迎える次の季節にまだ明確な期待が出来ない。新しい夜には星が見つからないから、航海は人工の羅針盤に頼るしかないんです。逃れたい一心で引いた一線上、空と海がそれぞれの意味を授かって、僕の爪には朱色の薄い血が少しだけ溢れて、す…

上弦の愛、下弦の死

責められ続けている僕の幻聴を救う術があると言うなら、どうぞお構い無く仰って下さいな。きらきらした自由を手に入れるのは至難の技。愛しているって言ったって何も具体化出来ないんだから、お前の諭すように言う頑張ってが聞きたくないんだ。震えて、何も…

地獄

掻き消えそうな人差し指をごまかして、朝が来るのを強く拒む。砕けた本当の自分を拾い集めたいけれど、諦めなければ追い付かなくなる。笑った声に違和感を感じても、正解を選ばなければ不正解なんでしょう?太陽が渦を巻いて僕の形を歪めて見せるから、まる…

明日は来てしまう

空の青で僕の皮膚が少し色付けばいい、雲を絡めたこの腕を間の抜けたサイレンで切り落として標本にしよう。人身事故で停まる腥い湿度の車内で君に手紙を認めた、もう十分、僕らは輪郭線を描けたから、大丈夫。君は!破り捨てるんだろうなあ!この電車を止め…

処刑と初経

生き延びるための悲しみを食べ尽くす獣になりたいな。歩幅の合わないあの人のもつれた爪先の心拍数。蘯ける程眩しい陽射しの中で笑っている僕らの土壌は乾いていく、神様がいないから僕は新しい妄想で自分を慰めることに必死だ。正解ばかりで切りが無い、愛…

soon after the melody ends

あんな嘘で躑躅が枯れる。こんな希望で陽が永くなる。そんな歌を歌った僕は、どんなロープで首を吊ろう?光って消えて弾けそうな爆弾を抱えて僕は、赤坂見附交差点にぼんやり立っていた。その気がないなら黙ってろよ、にっこり笑って、誰かの所為にして、白…

都市伝説

足らぬ旭を汚す者、行方知らずを償う者、行き交う足並みは奇数で正しさが黙る。東京になってしまった僕の金色が錆びていく、もう河を越えることもなく、坂を登れば終わりなんだね。具体的なのに表現できない、悲しいとも愛しいとも違う力は、真っ白になって…

綱渡り

数センチでさよなら!束の間のミズキが落花する昼下がりには似合わない、腥い瞬き。幼い瞳孔が淡い夕立を期待して、乞うた雨の素知らぬ振りに拭いきれなかった欲情が熟れていく。温い部屋とブルーフィルム、まぼろしじみたX線、世界をまるでミンスミートパイ…