2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

海洋学

近付く寒波の跫音を聴きながら倒れた身体を冷やしていく。誰かの為の言葉をそっと呟いて、きらきらしている雨上がりをなぞる。削り過ぎた鉛筆はそれでも長くて辿り着くことない楽園への海図を描くには充分だった。 青い海には届かない、伸べた手はやっぱり宙…

妙見島行き深夜特急

無性に悲しくなった夜は、あの日の海を思い出すようにしている。じゃぶじゃぶと潮水を掻く五本の指は江戸川に浮かぶ最後の島の油脂工場のにおいがした。空っぽの内臓を埋めるのはささやかに享受するディナー、忙しなく動く心臓と息の根を止めるのは麗しきス…

十一月のシトラス

迎えたくない明日を拒む方法を知る由もなく、抗うように眠らない日々を愛することなど出来んのだ。昂ぶり尖った神経が針みたいになったら、悴んだ掌の毛細血管を紡いで瞼を縫い付ける。冬はいつだって僕を責めるのに必死、薄々感付いている身体を弔う花なん…

気象庁

気象庁ならこの気持ちをなんと命名するだろう。痛みを畏れたまま新緑色のマントを翻した。誰も手に負えない後悔など知らないだろう、頬の傷を隠さないでいたら僕らはあたらしい曇天の下でアラウンド・ザ・ワールドを踊る。君に伝うものなど何もない、君の頬…

2008

半分になって、そこには空白。思いあぐねた呼吸器に棘が生える、ほら、存在していてはいけない生命体が今目の前の鏡の中でさかさまになってないているよ。僕は2008年をこの先もずっと憎んで生きていくんだ。こんな無様な愛におぼれ、それでも私の上に立つ腐…