十一月のシトラス

 迎えたくない明日を拒む方法を知る由もなく、抗うように眠らない日々を愛することなど出来んのだ。昂ぶり尖った神経が針みたいになったら、悴んだ掌の毛細血管を紡いで瞼を縫い付ける。冬はいつだって僕を責めるのに必死、薄々感付いている身体を弔う花なんてどこにも咲いていないじゃあないか。有刺鉄線の毎日を掻き分けて進む、届かない愛しているの為に振るうナイフ、そんな傷を癒そうぞ。
 正論ばかりに疲れたよ、時には嘘の赤さも心地いい。小狡い空に染む雲の八本の脚が何重にも列を成す新宿西口の高層ビルの首筋に這えば、僕は檸檬を隠し持つ彼と同じ気持ち。