2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ベルフェゴール

凍える雨に終の幻影、近付く夏の絶えた亡霊。繰り返す、繰り返す、ずぶ濡れの街にこだまする、電車があげる金切り声。救われない夜にとっぷりと、怠惰な悪魔が羽根を広げる。 もう一度僕は黒いマニキュアを塗ってあの月へと昇ろうと企むけれど、強い雨に撃ち…

潰瘍と糜爛

この調子だと夏まではあっという間だろうな。僕は足した数を減らして、邪魔だったコートを脱いで、描いていた絵を少し捨てたよ。身軽になりたい、氷漬けの壁は融点を越えますか? はぐらかした牙がちゃんと今日も傷を増やして、薄ら滲む体液と鋭利な痛みがこ…

劣性遺伝

どうした、季節が狂っているのにも気付かずに、ただ平凡な暮らしに辟易としているお前よ。ふらつく窓辺に私の足跡だけが残り、私の存在など忘れてしまったんだろう?骨の上に産廃を被せ、その上で生き延びている、ことをお前は知らない。 鴎や海猫が希有と鳴…

あいうえお

あなたが今、海を描いた!大潮の彼方から聞こえる苦悩や軽薄な声。さあ、真実は少しの生命をも削いでしまうのか、正しい沈黙を冷たい手で淘汰するのか?波と人間を縫い合わせて、眠る脳がはじまりの火を振りかざす。平気さ、本当だよ。まだ見つけてない無垢…

極彩色

多幸感で重力に逆らって落下する、現実から逃れて未来を失くす。ゆれたい、君に置いていかれたこころは寂寞の思いで突っ立っている。 風景は極彩色、美しい面影で融ける世界を描いた脆弱な輪郭線が僕には見えない、足りない数で白けた明日しか見えないんだ。…

螺旋階段

快晴、風が温い、駅に抜ける道を間違えて河に着いたよ。多分僕の街から見る夕暮れは、世界で一番白痴で、一番美しいんだ。 きっとこの橋を越えればあの街へ着く、届きやしない眺望で隠した祈り。生き延びる術を知っている、この風を読む。君のくだらない慕情…

もういいから

お前にもう滾るような怒りや理不尽や不公平を抱くこともなくなって、ただ何となく消せない名前を持て余している。思い出話や美談にもならない、奇妙な夏は永遠にそこにはないんだ。今、お前の笑顔も声もあまり思い出せずに、被害者面だけが妙に巧かったこと…

なくなってしまったんだ

今、線上で笑う君の横顔に赦される。TOESHOESが描いた絶妙の軌道を、僕のSLIP-ONが真似して、うん、それで、弔っている僕を笑う君がいる。酷い頭痛で、思い出が消えていく!脳内の血管を感じるんだ、稲妻みたいな形で僕の頭蓋骨の中を駈けていく。僕の記憶は…

添い遂げ、啀み合う二つの事象

消滅をもしかねない蜻蛉のような朝、終了をも知り得ない埋葬のような夕。知っているか?朝は静脈の青を、夕は動脈の赤を模していることを。 潮と汐の渦巻に沿って、ここへおいで。新月へと下る思い出の中で、宙を舞う蝶のはばたきが呼ぶ世界の空白を裂く風。…

すみか

光、の羣、やわらかな朿と蕾のまま、御胸に抱かれ逆さまに君の面影を見る。こんな空っぽな世界に生まれてきた君の名前は忘れてしまったんだ。あの日になくした全部、思い出せたら、きっと。 朝景は懺悔の青を帯びて、君や僕やビルや硝子や東京湾を脅かす。君…

ありか

明日を恐れても、限りが無いのは解っている。何をしようと朝は来るから、眠れぬ夜に星を覚えた。落下してしまいそうだ、どこに?僕は知らぬ間にこころをどんどんと欠如していって、重力に負けてしまうんだ。 真実は閉口したまま、しかし小さな息遣いで、いつ…

ああ!僕の心臓に糸杉を植えてくれないか!

瓦礫の上の炎の街で、兵士達が狂気に踊る。戦争の為の10000の方法と、君に届かない1つの言葉、向こう岸で結ぶ88の星座に、君はきっとなれるから。世界は生温い水に浮かぶ。此処で絶えていく僕を笑えよ。伸ばした極彩色の腕を受け入れる、君の指が次に握るの…

僕が誰かを殴らない理由

新しいものを得ようと古い呪術を捨て去って、こころで生きられなくなった人たちが季節の変わり目の匂いを忘れた。粧いは、形骸だけの装飾さ。鍵括弧でくくられた言葉だけが真実だとするなら、僕のこころの眩い悲しみはどうすれば良いんだろう。 旅人は、麗の…

海嘯

逆さまに見ていた世界は今ようやく丸みを帯びて、君と僕の天が繋がった。コップ一杯で起こした海嘯、僕の心臓からはもう青緑の血漿が溢れそうで、 君へと続く海に独りで舟を出す。左手には生命線、右手には櫂を持ち、僕が流した涙に溺れそう。 鉄紺の頭上に…

雨乞い

飛び立ってしまいそう、風の強い日、血と肉と骨の重たい体、両の腕を広げたら、きっと飛んでいけた。脳の中で電気が錯綜する、行き場が無くなって、背骨に沿って突き抜けて、どこかに放電した、ら、バチン。嵐を呼んだ、僕は雨男で、僕の気持ちを君が読み取…

ガーネット

まだ向こう岸で揺れている、真っ赤な柘榴みたいな空。いつもの海には黒い巨船が停泊していて、皴嗄れた遠吠えを繰り返して、何となく憂えて、泣いているような気がしたんだ。波の無い港の、微かな微かな波の音が、有限のような、無限のような模様で僕の三半…

進化論

溺れているのにも気付かず形あるものだけ欲しがって、明日がぼんやり見えてるから不安になる。月の大きさを忘れていく、幸せに勝ち負けを決める。不一致のスピードで走りだす未来、を、望んだのか。 光の裏に潜む何かを感じてしまった。でもそれが誰に伝えら…