ガーネット

 まだ向こう岸で揺れている、真っ赤な柘榴みたいな空。いつもの海には黒い巨船が停泊していて、皴嗄れた遠吠えを繰り返して、何となく憂えて、泣いているような気がしたんだ。波の無い港の、微かな微かな波の音が、有限のような、無限のような模様で僕の三半規管を揺るがすんだ。
 海は捻曲がる!反復しては、すれ違う!真っ黒な東京の、滞る汚血の海に、何億のいのちがあって何億のいのちが消えたのだろう。そんな日の空は今日みたいな色だったかな?僕はいつでも君を呼んでいるんだよ、柘榴みたいな君を!ああ、ああ!