もういいから

 お前にもう滾るような怒りや理不尽や不公平を抱くこともなくなって、ただ何となく消せない名前を持て余している。思い出話や美談にもならない、奇妙な夏は永遠にそこにはないんだ。今、お前の笑顔も声もあまり思い出せずに、被害者面だけが妙に巧かったことをぼんやり頭に浮かべている。