ベルフェゴール

 凍える雨に終の幻影、近付く夏の絶えた亡霊。繰り返す、繰り返す、ずぶ濡れの街にこだまする、電車があげる金切り声。救われない夜にとっぷりと、怠惰な悪魔が羽根を広げる。
 もう一度僕は黒いマニキュアを塗ってあの月へと昇ろうと企むけれど、強い雨に撃ち落とされて、砕けた骨が見つからない。こってりとした卵黄のような、南瓜のような月に憑かれている僕は魚座で、18番目の正位置のカードは不安定な因子を孕んで遠吠えをしている。