僕が誰かを殴らない理由

 新しいものを得ようと古い呪術を捨て去って、こころで生きられなくなった人たちが季節の変わり目の匂いを忘れた。粧いは、形骸だけの装飾さ。鍵括弧でくくられた言葉だけが真実だとするなら、僕のこころの眩い悲しみはどうすれば良いんだろう。
 旅人は、麗の人の火葬を見た!天へ昇る炎に導かれて明日の方角を知り、灰になる肉体の焼けた煩悩の臭いが愛しいのを知っている、自分の臓器や骨や血管の重みを知っているんだ。