柩の舟

 雨雲のような昏睡で迎える次の季節にまだ明確な期待が出来ない。新しい夜には星が見つからないから、航海は人工の羅針盤に頼るしかないんです。逃れたい一心で引いた一線上、空と海がそれぞれの意味を授かって、僕の爪には朱色の薄い血が少しだけ溢れて、すぐ消えた。果てしないなあなんて言った溜息が僕の身体に沿って螺旋状に落ちていく、ああ、空白と銘じた罰なんです。にやにや笑うな!僕を呼ぶな!陸も見えない波間、水面、そんな世界でどうやったら帰れるの?奪った櫂で漕ぐ僕のボート、夜の終末で冷えるシーツ。
 でも僕は遥かな引力を超えるんでしょう?愛などと言う不名誉な近似値だけではないことくらいは承知の上。腑に落ちないのは、その愛のために死ぬことも辞さないと思ってしまう。豊かな潮に巻かれながら無い翅で、飛べ!