夜船と北窓

 十文字のうそが取り返しのつかないことになって全てががらがらと崩れ去る夜に僕は真実を段ボールにしまっていた。遥かに大きな規模の月の海、砂糖菓子、天体観測、白妙の雪を望み迎撃する望遠鏡。新しく手に入れた力はやがて革命を起こすかもしれないんだ、五分間のまやかしにはうるさい沈黙を飾ろう。不味い土、埋める骨、蒔いた種から育つ不穏な花の香を抱いて、見やる空から大粒の淡い花模様。
 確かにそこに或る君の指に触れようと、不確かな思いはそれを決めて、悴んだって構いやしないさ。一ミリでも離れているなら意味などない、寄り添ったって遣る瀬ない。鋭利な感情、毀れる刃、背後で揺れる射ゆ獣の心を悼めた僕は月を知らず、そんな君は夜に夢中。