十七歳と九ヶ月

 まるで愚図のようだと誰かが笑いながら罵るので、僕の懐に携えていた遺書はチョコレートで汚れてしまったよ。教室のカーテンが薄ら笑いで揺れている、陽光の中で僕は本当の意味での孤独を覚う。空しく撞かれた鐘の音を合図に散々になった少女等の暴れた髪に欲情し、信じて待っていたものに裏切られながら、僕は明日を選び続けていた。黒い服が重たくなっていく春の温んだ湿度に僕の器官は海を湛え、つまらないんだ、選んだ明日は、ならば一思いにさようなら!!三月の線路はそれでも冷たく、夕暮れの江戸川駅が美し過ぎて泣けました。さびしくなって帰る街並には夕餉の醤油や葱の匂いが漂い、君の思いを綴った手紙のような三十一文字を饑い夢の砂浜にぽつねんと存在するポストへと投函し、僕は黙って溢れた潮を拭います。
 帰る?いいや、僕はしばらく歩いていくよ。