ハッピーバースデー

 ヒーローはあの娘を救うためにたくさんの人を殺してハッピーエンディング、思想の中で死んでいった彼らは最期まで幸せでした?月蝕の夜に僕はやさしい悪魔と膚を寄せ合って、フロイトはこんな僕に何を話すだろう、ユングは僕を罵るだろうか。日を追う毎に美化される思い出、眠りながら聞き耳立てた未来派宣言、僕の猥雑な重機で轢き殺された君は誠に不埒な黄色い声をあげて狂ったように慶んだ!僕がここにいなくても、電車はすべからく次の駅まで揺れるのだから、さようならの原理を一から十まで教えて欲しい。
 名前を棄てた神様の喫んだ煙の重さを量り、生活につんざかれたその体は正しさの鋳型に填まっていく。空っぽの思いを束ねて腕の真似事をして見せるけど散らばる砂すら寄せられず、訳もなく噤んだ唇の上で言いそびれた言葉が大渋滞。そんな場面に出くわしても泣きはしないさ、だってそうだろう、僕の涙こそ本当に無意味なのだから。世界よ、どうか終わらないで。