可惜夜

 没落した眼窩に夢の跡、泣き濡れて目醒めた二十五時、身の丈に合わぬチェロを持ち出して僕は虎狩りを弾いた、夜がしんしんと深くなる深くなる。天王星がやけに輝く冬の淋しさを糧に発電所を作ろう、次の駅に誰も待っていなくとも僕は駆け抜けることを知らない。白くなって沈む月、待たずとも来る黎明、位置に惑って棄て去る荷、山脈の向こうから呼んだ雨。誤飲したままの緑青と斜めの光とを鉢合わせた球体を潰した重圧の数を僕は五線譜の上で数えていた。振り向かれないなら僕は茨の影になろう、どうしたって君に成り得ないなら僕は僕を全うしよう、演ずるなど容易い・スイッチは壊れていない、君がくれた慈悲も目も眩むような未来も狂ってしまわないように、尖った神経の針と痩せた毛細血管の糸で夜明けの方角を縫いあわせたいんだ。
 僕は鳴らしていた鈍重な楽器を放り投げ、冷えた褥の型にはまる。眠らせて、くれないか!