人殺しのブルース(R298 remix)

 僕が立ち尽くした交差点、ハロゲンライトは折り重なって僕の鍵を照らしだすのに必死だ。二時間前、君はこの道を駆け抜けてそのまま海へ消えた。白波が砕ける様が何かを暗喩して、さよならは馬鹿みたいに殴り付ける雨のなかだった。繋がりあうには不確かすぎた十の指が夜の泥土を掻くんです、地球の引力だけが力を持っていた、僕らが吐き出した侮蔑、CO2、君の裸体、僕の体液、そのすべてが床に転がる・乱雑。びょうびょうと澄めるやさしい悪魔の断末魔で僕はもう二度と眠る機会を失ったんですね、自らのカルマにヤられて振りかざした恋で、君を殺しました。
 傘が無い玄関を飛び出した君を追って、旅立っても手遅れ。潮は鹹い・道は広い、君の靴がひとつだけ堤防に転がっている。慣れた手ほど大きくない掌で屠殺された家畜のような声を、夜の淵を彷徨う旅人のような顔を伏せた。びしょ濡れのレンズに涙なんて名前は付いていないんです。海上にある途方も無い闇に君の暗い獣のような尖った髪を、思い出して、しまうのは、どんな罰ですか?出て来なかった君の名前をようやく呼ぶ刹那、誰かが僕の横を駆け抜けた!じゃぶじゃぶと遠ざかる音、粗い呼吸と醒める熱、「さよならだ」低い声、ああそれは二時間前の君のリピート?