世界の中心で愛を貪る

 くたびれ果てた巨いなる魔物の背がこんなにも美しく見えるから、口ずさんでいた鼻歌が影をも失う。ねぇ、伸ばしていた手が君に触れたとき、世界は変わると思っていた僕は淘汰されるべき生物かなあ。食らいすぎた薄荷煙草のせいで荒み果てた咽喉の荒野に佇んだ、立ち竦んだ、戦い敗れた人の群れがやがて散々にほつれ、故郷の土へ還っていくように、僕らは激しい雨の日に不毛なセックスをしました。脚の長い虫たちが死んでいくから夜が明けるよ、颶風の止んだ朝の洗い晒しの風景がこんなにも切なく悲しいものだと今更気付いてしまって、僕の手に集めた小鳥の死骸はいつまで経っても復活の兆しを見せず、それどころか僕の愚かな体温で腐敗を進めていくのでしょう。
 世界の中心で貪った愛が君のために何かしてくれたかい?救われない僕達のために食事や居場所をくれたかい?こんなにも卑しい営みで満たされたものと欠けてしまったもの、どちらが多いんだろう。物理学の法則・幾何学の数式、僕らは感覚を言葉で表すのに何億年かかって、それでもまだ辿り着けないなんて!旅人は道を間違えた、それは僕か、はたまた君か。