レムニスケートの煙

 一瞬は粉々に砕けて永遠になった。僕ははっと息を飲み、しばらく黙っていると一月の寒さがこころの歪んだ部分を抉り取って、うろんな客はいつの間にか帰るべき場所もないのにどこかへ行ってしまった。予言者の思い描いた最後の風景は本当に全部が絶望に包まれていたのか、僕は確かめる術を知らずに歩きだした、忘れたばかりのやり方を思い出してもいいのだろうか。君に会えなくなってから何度目の冬?温めてくれなくてもいい、謝りたい言葉があるんだ。それなら僕の胸を切り裂いて掴み取って走って逃げろ、河を超えたらさようならなんだな、悲しくなどないのだ、だから、真摯な眼で僕を見ないで。
 一と八の頭上に存在する筈もない神様が与え給うた永遠の証が君の思い出とやらにちらついている、遠くの街の雪の気配、間違いでない嘘、真実が企んだ不正、葬り去るべき討論は僕の血中で燻りを見せ、まるで手の内で光って消える薄荷煙草のようです。