パラレルワールド・デッドエンド

 僕は須く存在する日々の疲弊を紛らわすための煙草を止めて、それでなくても白い息に冬の到来が見えた。伺ったって帰ってこない問いかけ、僕の眼にはどうやら涙に濡れたってオリオンがはっきり映っている。君は何を見る、何を知る?償い方も忘れたくせに、コンクリートの上、骨を埋める場所を捜す君は愚か?いつもより早く飲み干した珈琲の匂い、僕は淋しさを紛らわすことに必死だった。契りを認めた紙は僕の手の中でくしゃくしゃになって、戻らないのは滲んだ血、汚れているのは僕の精液。ハロゲン灯に与えられたゴルフ練習場のネットが巨大な深海魚の様相で深夜の街を泳いでいく、僕は全くの無知の振りでこころの浅瀬から櫓を掻いて点だった体が成した線。夢ならよかったのにそうでもないんだな、冬の潮は冷た過ぎて目醒めたはずの心臓が息を潜めた。粉々になってしまった君の欠けらが途方も無い洋上にふらふらと浮かんでいた、僕は水面で宛の無い旅に出た右腕を捜していた、君の恣意は僕の弔慰と交わらずにパラレル、論じた座標軸の定理、永久機関。汚れた下着の中に隠した鍵を弄ぐる手の熱は確かだったけれど、それは誰の真似事なの?本当の君などいないんだったら、うその君を愛撫するこの五本乃至十本の指が行き着く先は、宇宙。