アンチアンドロイディズム

 死ぬほど寒い日、死ぬほど寒い夜、案外呆気なく僕らは終わった。終わった、と言うか、終わらせたと言うか。結局泣きもしなければ責めもせず、怒鳴りもせずに、ただ妙に淡々と何となく終幕に向かって行って、だらしなくて落ちも無い、後味の悪い演劇みたいで僕の幕締めの手を鈍らせた。笑わせてくれるね、FINALEなんて、案外簡単なもんさ、喝采も叱咤も安寧も無く、当然ながら惜しみなく送られる拍手も無く電話を切った。
 もう四時で、あとちょっとで朝が来るよねってなんとなくぼんやりと覗き込んだ窓越しに見た東の空が美濃紙に滲む青い顔料のようだ。煩い筆で掻き乱した静謐な時間だね、お前の部屋からはどんな色の空が見えてるのか、想像して何だか切なくなるよ。お前の風景、お前の風景、お前の風景は、もう灰色さ。
 明日の予定のことを考えてもう寝たんだ。夢は見ない、僕は、電気羊の夢は見ない。