不眠症

 さっきまでの眠気はどこへ掻き消えてしまったんだろう?褥に満たされた私の頭上には真っ黒な夜の影。脳の中で繰り返すもしもがそこら中に溢れてる。下らない自問自答。もしもあの時あんな事を言わなければ、もしも私が我慢し続けていれば、もしもあの日お前に出会っていなければ、今私はちゃんと夢に身体を預けられていたんだ。
 恋人と言う関係で得るものは結局、束縛とセックスだけなんですか?それでなきゃいけないんですか?ならば、猗、もう私には恋人なんておこがましいんです。
 洗い曝しの髪から椿と金木犀の匂いがする。