チェロがある風景

 チェロを弾くその男は、ある種の侮蔑を含んだ笑みで私を見た!私の湛えた顎髭にくだらない華々しき鼻血が滴る。薄く暗い部屋に暮光がちらつく、男の影が音に添ってゆれる、私の裸足に血がリズムを刻む。
 ―あんたに貸したアレ、あんたが地獄に落ちても返してもらわないけんのう。まぁ、あんたが死んだほうが早う返ってくるかもなぁ―ひひ、と笑いながら弓を落とした、かつん!
 私は飛んでいきそうな意識の渦に、音を失ったこの空白に小宇宙の広さを知る。覚悟、独白、網膜のPESSIMISM、黎明を待つ!時折鳴るお前の呼吸。

 ―冗談、や。あんたは生きろ。―
 ひひ、と笑いながら、また弦を掻いた、もう夜もそこにいた!私の血が温か。