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 何だか、僕は今日の天気はもうすぐ変わるような気ばかりして、鼻腔の奥で蹲る切ない器官をなけなしの鼻歌で慰める。あの人たちは、いつの間にか遠くへ行ってしまって、よく知っているのに、よく解らない世界があるんだな、って、ほらね、僕は動かない足を筋肉のせいにして自分の意志の弱さとかは隠したんだよ。まだらに散る雲の向こうから射す光に射抜かれて、僕は鳴らせない弦の高い高い音を奥歯で噛み砕いて飲み干した。引力の病気で死ぬ畸形の白犬を、三拍子の雨音で導いてしまいたい。
 昨日殴ってしまった惑星、痛めた薬指の腱間結合、僕は、泣きそうな瞼を腕で隠して、西から漂う雨の臭いを誰よりも早く嗅ぎ分ける。しばらくベースは弾けないな、僕は時々来るしくしくと泣く痛い波を、いつまでも抱えて生きる。