オールトの雲

 何光年離れたら君は僕を忘れてしまうだろう?火星くらいで根を上げて、新しい恋を憶えるだろうか。東京のひかりのノイズに邪魔されて君が見えないよ。たいして離れ離れでもないくせに、少しずつその輪郭や声色があやふやになっていくのは、もう二度と会えないから。僅かな美化も愛したくない、欠けた風化が心苦しい、未完成と寂しく笑う君の足りない欠片すら僕には大切なのだから。
 積み上げられた人類の輝く希望に圧し潰され、僕らは新しい進化に甘んじていく。