新世界

 心臓の音がよく判る、少し苦しいベッドの間、明日の朝を恐れているから窓枠の振れる音にも怯えてしまう。酒精に毒された怪物が引き摺る跫音を響かせて、来そうで来ない次の一秒を黙らせた。四月なのに悴んだ指に忘れた指輪の跡が存在したら、よかったのにな。何度も何度も押し寄せる泣きそうな言葉を制止したのは、減速した風景が一枚の絵になったから。遠退く画策、賢明な賭博、瞼の裏側に張り付いた海の器官がえらく活発に活動するのは、何故だい?
 覚醒する脳細胞を刺激するのは他でもなく朝の重圧。無知な卯月と無力な言葉で、また大切な誰かを殺してしまうのではないだろうか!喉が渇いているのに対処の仕様が思い浮ばず、憂鬱な窓辺に騒々しい水のざあざあとした幻聴を聞く。ざあざあとした、まぼろし