デウス・エクス・マキナ

 今帰れば間に合うだろうか、そうすれば君は河を越えずに済むのかな。木蓮の褪色にこの季節を追うのを諦めて、蜩の声を待ってしまう僕の潔さだけを褒めてほしい。いつだって世界は咀嚼しても噛み砕けずにいつまでも残り続ける肉の鉄臭い感じで、職安通り手前のバッティングセンターで目論んだだけの計画が行き場なく転がっているのによく似ていて、訳もなく笑った。なーんも知らないふりの新月、近付く予感、咽喉が少し不安に染みる。
 嘘つきの翻った海がよろしくとばかりに手を振って、僕らはいつか灰になる、海から産まれ土に散る。新しい宇宙の片隅でこころが死んだのにも気付かずに、手に入れたらそれで良いと、薄い満足を平らげた。
 描き続けていた筆が止まった時が僕のおしまいだと思っていた、こんなにも簡単に囀りを忘れられるなんて!遠い君、はぐれた僕、ラストシーンは結局神様が無作為に切った糸か否かだった。食い縛った歯が殺げる、ざらついている、ぎらついている、ふらつく僕の空洞へ。