海と花筏

 あの海を目指さなくなって、また一つ、季節が僕の手の届かぬところへ走り去っていく。求めるだけでは物足りず、さりげない裏切りだなんて、欲張り。チョコレートの芳ばしさ、高鳴る踵のリズム、そんな些細な要因で僕らはダメになっていく。
 立てよ!もう一度だけ、このワンダフルワールドが徒労だとわかってしまっても!打ちのめされてしまったら、思い出せ、水槽を泳ぐ魚影を、ビル街に翻る僕の神経を。そんな救われない神様の言葉たちに納得できるほど、まだ大人ではないんだな。青い卯月の花筏、あの海まで続いているなら、こんな気怠い身体を乗せて、どうか押し流してよ。