無償の愛

 常套句ばかりで、免罪符ばかりで、あなたとの会話はあてにならない。結局私から何を奪っていくの?与えもしないで、そっちだけが満たされていく。許されようとした!結局!お前は許されようとした!少し尖ったガラスの断片で奪おうと手をあげたら、もうしないでと哀願した。ああ、そういう、そういう手口なのか。

 サイレンは鳴らない!春が来たんだよ、あの人に告げなきゃって、抛り出した浅黒い手の甲にいつかの、いや、ちょうど一年前に感じた風の呼吸をまた重ねて言う。わざと幸せそうな顔をした。嘘をつき続けてきた僕に、今更この程度の演技は問題じゃない。砂がじゃりじゃりと私の足にしがみついて、ああ、だめだ、痛みに成って行くせつなさ。どれほど愛しても愛されても、奪う事には慣れなくて、でも、ああ、ぼくから、なんていう名前の意味や理屈や楽しさや普通でいる事を奪っていくの?差し上げられるものなら何だってあげようと思っていたあの日の僕らの孤独が、日常で薄らいで行って、お互いがお互いの存在を必要としなくなったときこの愛は終わるのであります。それはきっと水曜日かな?世界が終わる日みたい、水曜日、ららら、春じゃないほうがいいな、春は無垢すぎるから、僕らの終わりには似合わないよ。奪われて失って?それを繰り返して?喋れなくなって歌えなくなって描けなくなって書けなくなって、それじゃあ僕には何が残っていくのでありましょう。それを何の動物に例えられましょう。きっと、それは虫けら、そこへ近付いていく僕の罪の傷痕たち、這うのは皮膚の上だけじゃない。ワルツじゃないんだ、ギターの音だけが冴え渡る。あれは真っ赤な歌だと思ってた。秋の、夕暮れ、と紅葉、とそれから…そんな紅の歌。もう今更、歌えなくなった僕にそんな行為はただのマスターベーションに過ぎません。今もそうだろう?ただ、この視神経はあの想いだけを認知していればいいのであって、それ以外の事は望まれないのです、ただ何となく、煩がる事を嫌がって、瞬いた(SPARKLING)!広い海、一人じゃ広すぎるのは、僕が誰かを支えていて、誰かに支えられていたから。何もなくなった今は無様に硬くてぎざぎざのアスファルトに皮膚の至る所を裂傷で埋め尽くし、大声で「苦しい」やら「切ない」やら「痛い」やら「助けて」やらを叫んで、それでも墜落していかないアレとか、あの臭いを思い浮かべるのです。何もなくなったから抛り出されたの?そんな眼で見るな!言い訳をするな!私の声も聞かないくせに、愛してるなんて、どの面下げて言ってる心算?汚い、汚らしい夢。

SELFLESS LOVE?煩いな。