失踪

 僕はちゃんとここにいる。帰り道も知っている。それでも僕のこころが勾引かされるのはなぜだろう。四角い空が惑星の形を忘れさせたように、この街は僕の知らない街だったような気がする。見えるもの、聞こえる言語、往来する人や車、臭い、僕はこの街で生き、知り、その度に何度も失踪する。
 手当たり次第に事象を描き、撮影し、心情を認める、繰り返す行為へと落下する僕の不埒な慕情をひっそりにやにやと笑うこの魔都は東京という名前です。