亡霊の季節

 草野原の上に立つ、幾百もの亡霊、八月が近付いているんだね。夜霧は低く垂れ、濡れていた頬をほら容赦も無く濡らす。吐きかけた息を無理矢理吸い込んだら陰険な初夏の味、草木の出す粒子も全部全部剥がして、踊るように帰ってしまおう。AでもなくBでもない回答なら最初から、選択肢を与えないで、いつか死ぬ運命、あの亡霊に紛れる意味をちゃんと咀嚼して。半欠けの月が憂鬱、じゃみた光の地図で、足取りを導いて裏切らずに。
 ないならないでいい、あるなら全部おくれよ、ほうらね、黒い影が暦を走っていく。飄々と笑う風が今上の空を駆けていくけれど、澱んでる正しい空気を乱したりはしないんだ。