恋愛の真理

 横たえた身体がどんどん重力を吸い込んで、訳もなく眩しい朝の密室のような空気に沈む。本当はこのまま二度と目覚めなければ幸せ、だったりもするけど、あと数時間後にはきっとこんな記憶も整理されてしまって、消える。夜を構築する蟲達のぎちぎちと軋む鋭い十六本の牙から吐き出された青い青い粒子が、朝焼けまでの少しの間、世界を染め上げた。僕はそれに塗れて、その粒子を吸い込んで、憂鬱を湛えたこの空白の眼から落ちる、何だかよく解らないけれど酷く冷たい雫に、名前をつけてあげようと思った。悲しいんじゃなくて、寒いんだ。
 快楽に委ねて見失ってしまった行き先の存在すら、認めなかった君。セックスこそが答えだというなら、影に生きる僕の亡霊は君の倫理の俎上で無残にも殺されてしまうんだね。血反吐を吐き尽くし脳漿をぶちまけて、君の陰茎に殴打されて暴行、後、死亡する僕のおぞましく歯痒くも、美しい亡霊。
 君は知らないだろう!僕が本当に繋がりたかったのは!君とではなく、君の心となんだ…。