プロメテウス

 豪雨の途中で一瞬の青空、幻だったのか?僕の眼は都合のいい状況を勝手に投影して、消えてしまったことを心の底から悲しんでいる。不特定多数の失意の面影に大時化の渦が潜んでいる、掻き毟られた心が歪まないように捩る身。ずぶ濡れの身体を引き摺って、光のない隘路の真昼を行く。まるで海だ!灯火のない海洋の上で死んだ魚のようにその存在すらもみ消さそうになっている。風のない生温い街が消え、る。
 鳥が矮小な翼を濡らして雨の和音をアルペジオにばらしていく。遺棄したノンフィクション、慈しんだ嘘の神話、そんなものを僕らはどうやって愛せよう?心に小さな炎があって、薙ぎ倒した思い出や破り捨てた約束を焼べてしまうんだ、僕は、僕はここにいると、こんな雨の日に、言えないで噛み殺してしまうから、せめて君に、ひかりをあげたい。