落差

 見失ったまま残る地平線まで続く直線のアスファルトの上、変わらない明日がある、から、不安。どこかへ向かおうか、でもどこへ?最初に失ったのは方法で、その次は情熱で、欲しても選んでくれないお前の手と手。強いアルコールを摂取しようと、はたまた涙に溢れる映画を観ようと、排出されない毒ガスが血液に溶け込んで、明日が来ることを喜んでいいのか解らなくなるんだ。
 僕を乗せた車両には誰もいなくて、あとから追い付く快速列車を待っている。酷い空白が痛いよ。ここから明日へ一線を引いて、発車の合図と一緒に次の夜明けを愛せるかな?愛したいな、愛したいよ。少し目を塞いで何度も二人で行った海の音を思い出しては、切なくなるには充分な時間がある。この電車はあの海には通じていないはずだから、僕は追憶で生きよう。明日の前に今日があるんだ。
 光をなくしても、蛍光灯は気狂いのようにこうこうと影の薄い僕の神経に突き刺さっている。