ルイナー・ランナー

 好きで堪らない、を、言葉にすれば嘘に聞えるのかな?それでも今日、君に心揺らす一言を言えますように。深層心理に彩られた僕らの言葉たちは、自分すら本音なのか嘘なのか解り得ない。
 お互いに詮索しあうのは止めよう。って、言い出したのは僕の方だったっけ?いや、きっと自然に出来たルールだ。そんな気がする。二人が愛を誓い続けるのに、詮索は本当に必要なのか。これが僕らの共通点だったんだろう。「付き合う」って行為は、何を手に入れるんだろう?その行為で得る権利って何だろう。性干渉だったり、束縛だったり、詮索だったりするのかな。それを「付き合う」の儀式の中に取り入れたりはしたくなかった。ただ好きで好きで堪らないだけだったから。だから今日、君に涙落とす愛の歌を歌えますように。
 朝晩が冷えてくるようになった。9月のあの日のニュースはやっぱりそれ一色で、飛行機が貫通してぽっかり開いた穴にこの6年間で、何を詰め込んで繕って来たんだろうね。って、君が言った。この心は奪ったり奪われたりした一片だか二片、寧ろ何億片?誰のピースを借りて完成させたパズルなんだろう。もう数え切れないほどのロジック。もう数え切れないほどのトラジック。「ねぇ」って言いかけて、やめた。不毛な詮索。これは罠だ。9月のあの日、リビングに二人。
 こう、何て言うのかな、ああ、何も無い世界がただ単に近付いて来る感じ。戦争だ、テロだ、奪略だ、奪って奪われて誰か違う人間の心を持ってしまう感じ。いつの日か突然、じゃなくていつの間にか終わってた、みたいな。多分、すぐ来るんじゃあないかな?
 でもその日まで、その日まで、手を握っててもいい?とは言えなかった、自分の心のゼラチン質な部分を恥じた。畏れや、快楽や、真っ白や、真っ黒、その全てがなくなるその日まで。不毛な詮索はしない。いずれ衰える命に火を点けて、僕らはまだ走り続ける。いや、走り続けなきゃいけないんだ。生命に熱を捧ぐ為に。