箱庭

 引き摺った傷が悲しみの向こうで癒えていく夢を見て、さりげなく俯いた顔が涙で濡れるのを濃霧が隠してしまっている。2m先の宇宙と君の距離が反比例で遠退く。重い体、皮膚の下には脂肪がパンパンに詰まっていて、呼吸すら危ういこの白い夜に私は浮かんでしまいそうだ。いつかこの空が解けて明日が来るのか?たとえ私の中で完治しない今日がここにあっても鐘は撞かれてしまうんだ。世界は回る、どうしても、だって明日を待っている人がいるから、満ち足りない日々を刺すグングニルなどどこにもない。わがままに生き延びたずぶ濡れで壊死しそうな言葉達をちゃんと弔いの儀式で送ってあげたい。靴の中で蹲っている小さな石が煩わしい!(それは私に似ている)目を潰して見えたのは、新しい景色じゃなくて涙の影だね、神様!神様!神様、は、不揃いの私を見ていやしないんだ。AからB、BからC、次から次へ、流れていくのは、血潮さ。
 私の掌が箱庭でまた新しい世界を産んでいいなら、絶対に、須く、この世界の真似などしないんだ。さよならは、世界が終わる日に言うよ。