ヨハン

 夜明けを待つシュプレヒコール、十四番目の洋燈と齧ったジャイロ。湿度が高く水没した気分で、気温の低い汀を滑り往く超絶技巧練習曲の指先。イ短調には名前がないから、僕の大事な心の悲しみを象った裁断機、洋梨、角膜と同じ名前を与えてあげよう。死んだヨハンとジュニパーベリー、全部海に沈めてやろう、お前の好きだったあの港に、今日も巨大な船舶たちが国境を絶つ。ナベリウスがその黒い腕で描いて下さった、お前の骨とアカンサスの塔。死に場所すら失った鱗、傍受したチアノーゼ、何度も何度も繰り返せ!お前はお前の世界で生きろ!私は私の世界で笑うから!ヨハン、その灰色の骨が土に還る前に私が戴こう。