雨に健忘

 雨乞いの血は僕の中で蹲り、六月に賛歌を惜しまない。神様が託した言葉は小さすぎて聞き逃して、次がないことなどわかっているのにどうやら僕らは期待しているんだ。頭上にある雲が大きな網の巣を張って鯨やエルダーフラワーを捕食している。重くなっていく綿は爆ぜて、硝子みたいな雨が降る。傷ついて傷つけて、僕らはだんまりを決め込んでいる。甲州街道が飛沫を上げて、何かの音に阻まれている。尖って、尖って、僕の覚束無い足元を見るので精一杯だ。何度でも痛いんだ、何度も言いたいんだ、悲しみが溢れて君に伝わないように、良かれと思って解いた手は繋ぎ方すら忘れて、なくなってしまったものは、もうかえってこないと、僕は忘れていない。