手と手と

 崩れた呼吸が八月の亡霊を呼び寄せている。知らない誰かの声を聞き、はっとする。
 消息不明でいたさっきまでの僕は孤独なシーツの上で死んでいて、なんて、悪い嘘で。次の秒針を待ち続けるその間の世界は三回、手と手を取って踊れ。
 笑ったままの禁忌症、足りなかったはずの太陽、不可視でも瞬き続ける信号、君とどうやって愛せよう!
 不埒だな、腐り逝く暴言が真っ赤なバラを開かせるためのひとつのプロセスだとしたら、絡まりあった指先たちはちゃんと祈りを捧げられるんだ。
 ふたつのものがひとつの乞いをしたんだ。宇宙を構成する孤独な単位でしかなかった僕らは最早、独りではない。