キネマ

 僕は、泳いでいる。降りだした雨が廃墟の頬のように冷たく、夜警は悪意の中、潜めた罵声と愛憎の分裂をして鬼火みたいな燻りを見せていた。お前の影が僕に多くを望んでいる。目論んだ残像、訝しい共鳴、今呪ってやると微笑んだ僕の眼を、緝えろ。戯け合って滅んだ愛無き巣で、最期の遊戯と愛のキス。軋めロープ、お前の頸静脈を潰すその魂胆は世界で一番純粋な愛の往々にして不埒な憎しみ。お前への言葉を何度も捜したけれど、見付かった振りが巧いから、融けた烏に哂われるんだ。僕は、異常を来していると思われがちだが、そうではない、お前の為に描いたパトスが余りにも平凡で、こころが痛いんだ。世界は僕を特別視していない。此の儘に成りたい。這い蹲って移ろう想い出が痛いな。見えない、なんて嘯いて、本当は見えていたんだ。お前の果てしなく醜い痴情に燃えるその姿を。火柱が上がる、お前の陰茎は低迷している想像で、僕はそのあられもない、肌の寄せ合いを映画にしよう。