首吊りロープ

 そうか、知らない町へ行くのか、もう少し僕に喋らせてよ。もうすぐ来る季節にどんな気分で臨もうか。競合する原風景の眺望、世界の真っ只中で見透かされそうな暴走、ささやかな歌や食事で君を愛するという事を具体化したい。意味などないんだ、ないことに意味があるとうれしい、君の頬を突き抜けた一条の流水経路で揉みくちゃになった世界の半分を抱きしめられると言うなら、僕のこの死んだっていい感じ、どうなる?爆ぜそう!占いごときに見破られた心拍音が悔しいんだ。僕は解りやすく出来ていると、心の奥で見たこともない風景で笑う。暴挙と暴言、それから美しき暴走を以って、沈黙の歌を爆音と暴風雨で切り裂けたら、チェロ弾きの指はそんなに痛くない筈なのに、狂ってばかりもいられず、規則と倫理と道徳の上で夏になっても冬眠し続けている星忘れの民が夢の中でも蓮を食べている。
 君を果てなく想っても思い出ばかりが加速する。僕を恐れているのかい?ああ、そうだろう?たかが一本のロープで!たかが一本のロープでこんなにも陰鬱で芳しき死の臭いを漂わせる、あの造形が僕は好きだな。さようならだけでは物足りないんだ。