隅田川心中

 突き放すことも憶えたな。君を殺る僕の痛い心臓だって止まってみせた。近づいて遠退いて、そんな他愛ない現象で容易く傷ついた君の柔肌は一つの残像で歪んで見せた。堕落なんてつまらない、革命など起こらない、夜はいつだって僕の足元にあり、光はいつだって僕を照らしていた!僕の果てしない呪いの筆先で描き殴ったあの日の君が嫌った絵は、本当は君を想って描いたんだよ。
 沈没する気分だ。網膜の前で月島の町並みが次々と水没していく。伝えたいことなんて何一つ伝えられずに、口を開けば鹹い潮、言葉を話せば泡が増える。海に還ろう、君の手を取って、僕はあの潮流に砕かれたいんだと君に歌えば、君は丸で不気味な獣を黙殺する眼で僕を見ていた。名前のない関係でいられないんだ。