無神論

 愛してるって言ってやるなよ、帰って来られなくなるのは嫌なんだ。神様の言い訳を心待ちにしている八月の亡霊たちが鉄塔の上でエレキギターを弾きながらじっとりと湿った黒眼で見ている。尊厳死で揺れる季節の真ん中で煙突から上がる一筋のラインが似ていたのは君の横顔、僕の思い出が風化していくスピードは大きく開いた傷が化膿してそれでも癒えていく遅々としたそれを髣髴とさせる。足りなくなった薬が僕の頭の中に眩い光の筋を幾つも作って、歪んだ砂時計、愛と信じていた蛹の抜け殻、乞食と神様の骸骨が手を取ってダンス!
 泣いたっていいじゃないか、黙りこくっていた引力に拐されて世界の真ん中に落ちていく。不協和音にも似ている喉の枯渇、暴走と忘却の狭間でどっちつかずの距離を走る虚ろな秒針、見慣れた景色がどんどん遠ざかって行く。燃え尽きてしまうのは、僕の湛えた脂肪が揮発しているからだ、もう一度だけ、叫ぶとしたら何て言いたい?神様!