足音

 諦めては繋がりたくて、名前のない状態を抜け出そうとしなかった僕のいい加減な気持ちを、もうすぐ払拭する。ごめんなさい、憧れていたスタンスを愛していると勘違いして何度も臥した妄想の概念を知らず知らずにぶつけては、気付いて欲しいようなそうではないような、と中途半端な感情に浸って満足していた。恋愛とは一方通行ではないと言うことを忘れていた。ああ、ああ、静かに鳴っていた足音が聞こえなくなった、そうでもないわがまま、あなたへと続いて道がいつの間にか終わっていた。仕合せであることを望んでいたのに結局は僕の神経の流れのままに脳が夢見た泉にいつまでも浸って痛かっただけだ。あなたはきっと誰からも愛されてるから、その一つに成りたかった。この腕が抱きそびれた体のラインを今、自分に沿わせて果てしなく泣きそうな涙腺を制止している。この世界が何のために回っているかもう一度考えている。世界が一つしかないと言い訳している僕を殺して、歩き始めたこの道の先にあなたの残像が笑ってくれればな、と思ってしまう。下らない妄想と、解せない時間と、ドアが燃え尽きて酷い馨りがするのを、何となくで済まそうとしていて、不誠実だとおもう。最初から知らなければと爆ぜそうな記憶の根底のありか、ピアノの音がいい・どうしようもない、本当の事を言いたい為に化学の力を使っている、このオンボロな指先を許してください。さようなら、遠退き、消えた、あなたの、その足音よ。