銀河鉄道の夜

 心臓には柘榴石みたいな炎が灯り、徐らこの身を焦がしてもいいんだよ。正に終いえたその時に君が笑ってくれればそれでいい。古びた寓話の最後には僕の灰で君の名を刻め、真昼間の月の色をした爪を汚す僕の不義を最期に許してくれないか。

 待ち続けた手紙はこんな言葉で飾られていて欲しくなかったよ。河のお水は冷たいでしょう?早く揚がっておいで、私の外套で拭ってあげます。水面に犇めくミルクの粒はあなたを攫うために流れていたんだ。梔のあなたに流す涙など無いのだから。お望みならば。

 こんな銀河にひとりぼっちな訳ないだろう?確率の授業はもう終わった。僕らは恥じらって繋げなかった手をようやく繋いで、天鵞絨の寝台に横たわる。大腿骨はじゃあ君に、奥歯は土に埋めてくれ、この腕はもう何をも掴めないのだから!夜を行く鉄道に揺られ、僕だけ眠って、君は次の駅で降りなさい。そしたら、そしたらお別れだ!