ラ・カムパネッラ

 覚束ない指で朝を手繰り寄せ、次を待つ眼に燐寸の灯。べたつく海風がおうおうと泣いて、こころはいつだって掻き乱される。徒波、揺らいだ。羽田から見た東京湾はコンクリートに沿う青さと寂寞の念。尤もらしい言葉で僕をなじるな、やるせない胸の内で落ちる眠りはつらいのだ。失わざるを得ぬ黎明、遠くへ飛び去ってゆく情景、抗わずに済むのであれば本能のままに君を心行くまで味わいたい。煙る僕の頬をそれでも君は責めた。確信へと近づく度に腕には無聊な火傷、鼓膜を小さく震わす鐘の音、徐ら温む潮水へと君のために身を投げられるだろうか?