夜の神話(for Mr.A)

 静寂の怒号が窓を叩いている、指で塞いでも耳鳴りが止まらない。太陽が焦がした空の端から夜に化けて、散らばった火花は小さ過ぎて僕を照らさない。空想の愛を抱く両腕のラインの空白ばかりが胸を躙れば、膿んだ糜爛を慰める居場所もない。
 肩越しに見えたベルフェゴールが顎髭を撫ぜて、融けた影が僕と雑ざる。燃え尽きていく地球を笑って見せた彼は扉の鍵を持っているようだ。重力に圧死する花は蔓を伸ばして、生き残った葉緑素が謀らずも光合成をする。
 舌打ちが何度も響いている。揺らぐな、僕のぽつねんと淪む瞳孔の奥を見ろ。その瞼に映る僕の眼を、見ろ。