MABOROSHI

 塊が喉に痞えて、僕は黙る。会いたいなんて言ってはいけない。光の侮蔑で明日が晴れる、右手の傘を捨てたなら、雨を呼んでもいいですか?この電車はお前の街には向かわないと知っているくせに、お前は狡い。大きな荷物のことばかり気になって、終点に着く頃にはお前の愛想笑いしか思い出せなくなりそうだ。
 一昨年の夏はどうだったかな、去年の冬は何をしていた?こんなことを言うために口を開いたのではないのに。少し薫った煙草の銘柄、春の温い海に絶える蛤が見せる幻覚、さりげない死刑、誰もいない車輌。